老いて美しく
2月14日(水)
ゲストハウスのブゥバーンが、バイクのエンジンを回す
ジェスチャーをして、「ゴー、ブンブン?」って言いながら、
「ちょっとこの辺をぐるっと案内してあげる」と私をバイクの
後ろに乗せて、いろんなところに連れて行ってくれた。
まずはブゥバーンが住んでいる家(たぶん(笑))。
ダイニングキッチンは半分オープンキッチンになっていて、
全体的な雰囲気がとてもかわいらしい。
そして庭にはたくさんの木々が。
ココナッツ
ジャックフルーツ
パパイヤ
私が、ワーワー喜んで写真を撮っていると、ブゥバーンが
パパイヤを採ってくれた。また、ちょうどいい竹の棒があるわけで(笑)
それから、ブゥバーンのお姉さんの家に立ち寄る。
お姉さんとその娘さんがいた。
ブゥバーンがお姉さんとおしゃべりしながら畑の野菜を採っている間、
娘さんと話をした。私が日本人だとわかると、片言の日本語で話してくれる。
「日本語勉強したの?」と聞くと、「アニメが大好き」とのこと。
「ドラゴンボールとか?」って聞いたら
「もっと新しいの」とのこと。
「だよね、新しいアニメいっぱいあるんだよね〜。」と笑った。
そして今度は畑が広がる場所へ。
ここで水栽培がされていて、レタスとかの葉っぱ類や
ソムタム(パパイヤサラダ)用の青くて長いパパイヤを購入。
し尿を肥料にするために飼っている豚もいた。
こちらは生後1週間の赤ちゃん豚たち。
買い物をすませると、ブゥバーンの実家にも連れて行ってくれた。
そこには彼女のお父さんが、外の椅子で横になって休んでいた。
ブゥバーンが声をかけて、「彼女、日本から来たのよ」
みたいなことを説明してくれる。
お父さんの年齢を聞いて驚いた。
98歳。
私がさらに驚いたのは、お父さんがいまでも仕事をしていること。
ゆっくりゆっくり手作りで竹の籠を編んでいて、周りの人たちが
それを一つ30バーツ(約100円)で買ってくれるのだという。
丁寧に作られた、きれいな籠。
ここで竹を削って、竹ひごを用意し、それから編むそうだ。
ナタを使って、一つ一つ。
私が「こうやってこうやって削るんですか?」みたいに
身振り手振りで聞くと、嬉しそうに「そうそう。」と
頷いてくれた。
お父さんは80年前に日本人の友達が一人いたみたいで、
私が日本人と知り、すごく優しい目で見つめ返してくれた。
細い体、細い足首。
お父さんの足をさすりながら「元気ですか?」と聞くと、
ブゥバーンが「元気よ。でも、もう歳だから、ご飯は少しずつ
何回にも分けて食べていて、お水かお湯を毎日飲んでる」と話してくれた。
手のひらも見せてもらった。
細くて柔らかい手。「この手で毎日カゴを編んでるんだ。。。」と
思うと、ただただ「尊敬!」の気持ちがこみ上げてきた。
このか細い体の隅々に、純粋できれいなエネルギーを感じる。
なんというか、うまく表現できないんだけど、
その存在が、びっくりするくらい美しいのだ。
「うわぁー、綺麗な人に会っちゃった!」と私はすっかり感動して、
お父さんが作った籠と一緒に写真を撮らせてもらった。
お父さんは、私が写真を撮りたいというのをブゥバーンから聞いて、
横になっている状態から立ち上がって椅子に座ってくれたのだが、
その動作もとてもスムーズで優雅だった。
チェンマイに来て、ときどきお年寄りの姿に目がいく。
とてもゆっくりな時間の流れで生活している姿。
サタデーマーケットにローラと行ったときなんか、露店で
お店広げて店番やってるおばあさんが、ゆっくりゆっくり
ご飯を食べていて、そのスローモーションの姿が魅力的で
ローラと二人でしばらく見とれてしまったこともある。
「なんだろうね?見とれちゃったね。きれいだよね。」って
言いながら。
メディカル気功マッサージのアジャン(先生)が、背中が丸くなった
高齢の生徒さんに「無理に背筋を伸ばそうとしなくていい。年齢を
重ねた体は若いときとは違うんだから。それでいい。ただ、その
体を自覚しながら、少し意識して体に覚えさせるだけで、全然違ってくる。
その体なりのバランスを整えていけるから。」
と説明していたんだけど、すごくいいなと思った。
年齢を重ねて、老いていく美しさ。
なかなか体験できない、貴重な、そして幸せな時間だった。