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ARMA美術館と小松嘉門さん

今朝は少し早起きして支度を済ませ、8時半にゲストハウスを

出発。歩いて20分程のところにあるAgung Rai Museum of Art

別名ARMA美術館へ向かった。

ネットを見ていると、ここの併設レストランで水曜日の朝

オーガニックマーケットをやってるみたいなので、

ちょっと行ってみることにしたのだ。

で、到着したけど、マーケットらしきもの見当たらず。。。

レストランの人に聞いたら「何年も前はやってたけど、いまは土曜日だけ。

他の場所でやってるみたいです」との返事。おぉーそうだったのね、と

じゃあジュースでも飲もう、とフレッシュジュースで一休み。

りんご、ライム、ジンジャー、(あともう一つ忘れた)

はちみつ抜きでお願いしたら、「酸っぱいから別でつけときますね」

って言われたんだけど、十分な甘さでスッキリしてて、ジンジャーが

ピリッと効いてて、なかなか美味しいジュースだった。

 

で、せっかく美術館へきたので、入ることに。

ここも入館料にドリンク券がついて80,000ルピア(640円くらい)

よく手入れされた庭園の中に、年季の入ったオープンステージ。

館内は撮影NG。

古い絵が展示されている建物と、カラフルな現代バリ美術の絵が

展示されている建物。美しい色使いで、見入ってしまう。

 

大きな敷地内にはVillaもあって、宿泊もできるし、田んぼとか、

庭園とか、とても綺麗な施設だった。

敷地内を散策していると、画家や彫刻家の方々が作品を作っていた。

挨拶して見せてもらう。

この伝統的で精密な絵は5ヶ月かけて描いているとのこと。

こちらのお父さんは、「日本でなんの仕事してるの?」とか

いろいろ話してくれて、最後はバリ語のレッスンまでしてくれた(笑)

木々の間から差し込む光が気持ちよく、またしばらく散策して

いると、可愛い女の子を連れた日本人男性から

「こちらで個展やってるので、よろしければどうぞ」と

声をかけてもらった。

 

その方が木版画家の小松嘉門さんだった。

小松嘉門さん 木版画ギャラリー

 

木版画って、中学とかの美術の授業のときくらいしか縁が

なかったので、すごく新鮮。

 

小松さんは、子供の頃から絵を描くのが得意で、いつも上手に

絵は描けていたのだが、学校の授業での木版画となると

一生懸命彫るものの、絵を描くように、思った線が描けないことで

ストレスとなり、彫刻刀を放り投げるくらい嫌いだったとのこと。

 

そんなある日、画家のお父様が「お前、これで彫ってみろ」と

数本の彫刻刀を買ってきてくれた。その彫刻刀を使って彫ってみると、

自分の思い通りにスイスイ線が彫れる。

 

で、夢中になった小松さんは、それから毎日のようにうちに帰る

と木版を彫ったそうだ。そしてその後「自分はこれをやっていこう」と決心。

 

推薦で美大に進めたのだが、ここで問題発生。木版画の先生がいない。

そこにいらしたのは、銅版画の有名な先生で、木版画は教えられないとのこと。

ということで、小松さんは先生から「君、ここで勉強していいよ」と

研究室の鍵を渡されて、大学生活はそこでひたすら自分なりに

「そうすれば細い線を写せるか」と研究を重ねたとのこと。

柔道部の古くなった畳をもらい、ちゃぶ台を置いて、日本スタイルに

コーディネートした研究室で。

 

卒業後は社会人となり、造形関係(大道具とか)の仕事についた小松さん、

26歳のときにバイクで交通事故に遭った。

外傷はなかったものの、左腕がなかなか動かない。病院を変えて検査を

してもらったところ、腕の神経が引っこ抜けていた。脊髄に近い場所のため

手術もできない。。。。このまま一生左腕は諦めて生きるしかない。。。

絶望の日々。

それでも、なんとか手を尽くし、手術を数回してもらい、必死にリハビリを行い

腕が全く動かない状態からは脱することができた。

 

でも、自由にならない左腕を悲観する日々は続いていた。

 

そんなある日、大好きな欅の木を見ていたときのこと。

欅は枝木を切り落とされ、ほぼ裸状態になる。それでもまた新しい

季節になると芽を出し、新しい枝を伸ばしていく。

そんな欅が「おまえ、腕の1本くらいでなんだー!」とガツーンと

大きなメッセージを送ってきたのだ。

 

小松さんは、その欅からの衝撃的なメッセージをしっかりと受け止めた。

そして、それからはさらに木に魅せられて、ひたすら樹木の木版画作品を作り続けている。

 

素敵な話だった。

 

そしてその話を聞いてから見せてもらった、小松さんの木版画。

樹木に対する愛に溢れていて、その画の持つ迫力がすごい。

繊細で美しく力強い、木の生命が伝わってくるのだ。

 

 

小松さんはとても気さくな方で、その後もバリに来るきっかけとなった

バリ舞踊の話や、私がバリ舞踊をまだ見たことがないという話をしたら

お勧めのバリ舞踊のことなどを教えてくださった。

一緒にいる可愛い娘さんと共に、柔らかくて優しい雰囲気。

 

木版画制作過程の版や彫刻刀も見せてもらった。

いろんな人生があって、何に命を捧げるか?ってのも人それぞれ違う。

なんか、本当、素晴らしいなぁ。。。

と感動した。

バリでの新しい出会いに感謝。