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Mala Dharaでの1日

チェンマイの朝は肌寒かった。

部屋の屋根には小鳥たちが巣を作っており、私が起きて動き出すと、

小鳥たちもガサガサと活動し始めた。

クアラルンプールでは着ることのなかったダウンを着て、外に出る。

澄んだ空気が気持ちよくて、何回も深呼吸した。

 

のんびり支度をして、朝ごはんを食べに敷地内のレストランに向かう。

レストランの裏側では、従業員の人たちが青空キッチンで料理をしていた。

 

朝ごはんをお願いすると「2階のテラスで食べる?」と聞いてくれたので

そうすることにした。

意外なことに朝食は洋風。

新鮮な野菜、手作りのピーナッツバターとトースト

スクランブルエッグもサラダも、塩胡椒だけの

シンプルな味付けだ。美味しい。

 

いつもの何倍もの時間をかけてゆっくり朝食を済ますと、ローラが現れた。

ホテル敷地内にあるChalet(シャレー)と呼ばれる建物でダンスするよ

とのこと。時間を確認し、「じゃあ、あとでね」と約束した。

 

時間になったので Chaletに行った。

エキゾチックな音楽が流れて、ローラが滑らかな動きでダンスしていた。

 

そして、私が来ると、これから見せてくれるダンスについて話してくれた。

 

彼女の今回の作品は、家族に焦点を当てているとのこと。

父方のおじいさんが体験した話。

戦争で捕虜になり、そこでの苦しみや、解放されたときの喜び、

解放されたその日、ローラのお父さんが生まれたこと。

ローラが自分のルーツとなる人たちから話を聞いていく中で、

感じた想い、想像した彼らの想い、を表現している。

「まだ完成してないんだけど。。。」と言いながら、作り上げていく過程

を丁寧に説明してくれた。

 

そして「これがおじいちゃんの歌声」

と笑いながら、録音したローラのおじいさんの歌声を聴かせてくれた。

フランスの古い歌を、独特なテンポで、少しかすれた声で歌うおじいさんの声。

その優しくて、暖かい、可愛らしいとも思える雰囲気ある歌声にしばらく

聴き入った。二人でニコニコしながら。

 

それから、ローラが初めて個人で取り組んでいる作品であるダンスを

踊ってくれた。

 

鳥肌が立った。

心がこもった、美しいダンスだった。

彼女の心が、表現したいという想いが、とても綺麗に表れていた。

 

私が、感動したことを伝えると、ローラは少し照れながら

「ありがとう。あなたがこの作品の初めての観客よ。」と言ってくれた。

 

その日の午後は、特に何もすることなくのんびりと過ごした。

そして夜ごはんは、ローラと一緒に2階のテラスで摂り、星を眺めて過ごした。

 

途中、オーナーのPloyが来てくれたので、いろいろと話を聞いた。

このMala Dharaを建てるのに、デザイン通りになかなか建築が進まず、建築業者と

何度もやり取りをして、それでも思い通りに建ててもらえず、壊して、建て直して、

と長い長い時間がかかったこと。(もちろんお金も)

Ployがこだわっている、オーガニックについて。

周りの農家はビジネスとしての米作り、野菜作りのため、1年に3回米を作り、土地が

痩せないように化学肥料を使っていること。農薬の問題もある。

 

Ployは山の中に米を作るための土地を持っている。そして、種を撒いた後はそのまま。

自然栽培だ。

「ときどき見に行くけどね」と笑う。

山にはもちろん野生の動物がいるので、お米の出来高は少ない。

動物に食べられてしまうからだ。それでも柵を設置したりはしない。

Ployは笑いながら、「自然の中で育った作物は、動物とシェアしなくちゃいけ

ないでしょ?私たちは仕事してお金もらって、食べ物が買えるけど、

動物はそういうことできないしね。」と話してくれた。

そんなPloyたちが作っているお米は、品質の良い品として、チェンマイのレストラン

で高い値段で買ってもらえるとのこと。

 

だからPloyは周りの農家の人たちに「きちんとオーガニックの良い作物を作ったら

量は少なくても高く買ってもらえるんだよ」ということを何回も話しているそうだ。

 

「だけと、本当にわかってもらえないけどね。。。」と最後は諦め気味に苦笑いしていた。

 

私は、Ployの持っている「自然とシェアして当然」という想いがとてもいいなぁと

思った。

このMala Dharaは、Ployが醸し出す独特の空間がある。

いわゆるビジネス的な見方をしたりすると、従業員はみんなのんびりしているし、

対応が適当だったり、間違いがあったり。。。

でも、そんなことはどうでもよくて、根本にあるPloyの想いが美しいから、ここはきっと

保たれているんだなぁと、そう思った。